ZEBを理解するなら、まずBEIを理解しましょう
ZEBについて調べていると、「BEI≦0.5」「BEI0.6」「一次エネルギー消費量50%削減」といった数字が必ず出てきます。ZEBを初めて扱う設計者の方からすると、このBEIとZEBの関係が少し分かりにくいかもしれません。しかし、ZEBを考えるうえではBEIを理解してしまうのが一番早いです。
BEIとは「Building Energy-efficiency Index」の略で、建築物の一次エネルギー消費性能を表す指標です。簡単に言えば、「国が定める標準的な建物と比較して、設計している建物がどの程度のエネルギーで運用できる設計になっているか」を数字で表したものです。
国土交通省も、BEIを省エネ基準からどの程度エネルギー消費量を削減できているかを見る指標として扱っています。一次エネルギー消費量には、空調、換気、照明、給湯、昇降機など建築設備で使用するエネルギーが関係します。
ZEBは最終的に一次エネルギー消費量を大幅に減らす建築物を目指すものですから、その達成度を確認する物差しとしてBEIが使われるわけです。
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BEIの計算方法は意外とシンプルです
BEIの基本的な考え方は非常にシンプルです。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
実際の省エネ計算では、その他一次エネルギー消費量などの扱いを考慮して算定しますが、まずはこの式を覚えておけばZEBとの関係がかなり理解しやすくなります。
例えば、基準一次エネルギー消費量が年間1,000GJの建物を想定します。その建物について、高効率空調、LED照明、高性能な換気設備などを採用し、設計一次エネルギー消費量を年間500GJまで抑えられたとします。
この場合、
500GJ ÷ 1,000GJ = BEI 0.50
となります。
つまり基準となる建物に対して一次エネルギー消費量を50%削減できているということです。同じように、設計一次エネルギー消費量が700GJならBEIは0.70となり、30%削減。600GJならBEIは0.60となり、40%削減です。
| BEI | 基準からの削減率の考え方 |
|---|---|
| 1.00 | 0%削減 |
| 0.90 | 10%削減 |
| 0.80 | 20%削減 |
| 0.70 | 30%削減 |
| 0.60 | 40%削減 |
| 0.50 | 50%削減 |
| 0.25 | 75%削減相当 |
| 0.00 | 100%削減相当 |
設計者の方であれば、「BEIを0.1下げる=一次エネルギー消費量を基準からさらに約10%削減する」と考えるとイメージしやすいと思います。ただし、実際には設備用途ごとの計算結果を積み上げるため、単純に一つの設備を高効率化すれば必ず0.1下がるというものではありません。
ZEBとBEIにはどんな関係がある?
ZEBとは「Net Zero Energy Building」の略で、高断熱化や高効率設備などによって大幅な省エネルギーを実現し、そのうえで再生可能エネルギーを導入することで、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づける建築物です。SIIでは、ZEBを『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4段階に整理しています。
ここで重要なのが、「ZEBだからBEIが一つの数値だけで決まるわけではない」という点です。特に『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Readyでは、再生可能エネルギーを除いた省エネルギー性能と、太陽光発電等を含めた最終的な一次エネルギー収支の両方を見る必要があります。
基本的な関係を整理すると次のようになります。
| ZEBの区分 | 省エネ性能の主な目安 | 創エネを含む削減 |
|---|---|---|
| 『ZEB』 | 再エネを除いて50%以上削減 | 100%以上削減 |
| Nearly ZEB | 再エネを除いて50%以上削減 | 75%以上100%未満削減 |
| ZEB Ready | 再エネを除いて50%以上削減 | 創エネは必須ではない |
| ZEB Oriented | 用途に応じて30%または40%以上削減 | 原則として創エネ評価による達成ではない |
資源エネルギー庁の資料でも、『ZEB』は省エネのみで50%以上、創エネを含め100%以上の削減、Nearly ZEBは省エネ性能を確保したうえで創エネを含め75%以上の削減と整理されています。
ZEB Readyは「BEI≦0.50」と覚えると分かりやすい
実務上、ZEBを検討している案件で比較的よく目標になるのがZEB Readyです。ZEB Readyでは、再生可能エネルギーによる削減を除いて、基準一次エネルギー消費量から50%以上削減する必要があります。
つまり基本的には、
BEI≦0.50
を目指すことになります。
ここが重要です。太陽光発電を大量に載せてBEIを下げればZEB Readyになる、という考え方ではありません。ZEB Readyでは、まず建物そのものの省エネ性能によって50%以上の削減を実現することが求められます。高性能な外皮、高効率空調、照明、換気などを組み合わせ、建物自体のエネルギー消費量を減らす必要があります。
SIIのZEB関連資料でも、ZEB ReadyについてBEI≦0.50という目標が示されています。
そのため、設計初期段階でZEB Readyを目指すのであれば、基本設計がある程度固まってから省エネ計算をするのではなく、早い段階でWEBPRO等を使ってBEIを確認することをおすすめします。完成間際でBEI0.63から0.50へ下げようとすると、空調機器や照明だけでは足りず、設計変更の範囲が大きくなることがあります。
Nearly ZEBはBEI0.50を達成したうえで創エネを加えます
Nearly ZEBになると、考え方が一段階進みます。まずZEB Readyと同様に、再生可能エネルギーを除いて50%以上の一次エネルギー削減を実現します。そのうえで、太陽光発電などの再生可能エネルギーを加え、基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減を目指します。
例えば基準一次エネルギー消費量を100とします。省エネによって50まで減らしただけであればZEB Readyです。そこから太陽光発電等によってさらにエネルギー収支を25以下まで下げることができれば、75%以上削減となりNearly ZEBの範囲に入ります。
ここで注意していただきたいのは、「太陽光発電だけで75%削減すればいい」という意味ではないことです。まず省エネによって50%以上削減することが前提です。この順番を理解しておかないと、ZEB計画の初期段階で設備計画を間違えやすくなります。
『ZEB』は年間の一次エネルギー収支を正味ゼロにする水準
『ZEB』はZEBの中でも最も高い水準です。まず再生可能エネルギーを除いて50%以上の省エネルギーを実現し、そのうえで再生可能エネルギーを加え、基準一次エネルギー消費量から100%以上削減します。つまり年間の一次エネルギー消費量について、正味ゼロまたはマイナスを目指す建築物です。SIIも『ZEB』について「年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物」と定義しています。
例えば基準一次エネルギー消費量が100で、省エネによって45まで削減したとします。そこから太陽光発電等によって45以上を補うことができれば、最終的なエネルギー収支はゼロ以下になります。
ただし、実際の建築計画では屋根面積、敷地条件、建物高さ、周辺建物による影、設備容量などの制約があります。特に延べ面積が大きくなるほど、床面積に対して太陽光パネルを設置できる屋根面積の割合が小さくなるため、『ZEB』の達成難易度は高くなります。
そのため実務では、まずZEB Readyを確実に目指し、その後に創エネをどこまで積み上げられるかを検討するという進め方が現実的なケースもあります。
ZEB Orientedは用途によってBEIの基準が違います
ZEB Orientedは少し分かりにくい区分です。ZEB Readyの達成が難しい大規模建築物などについて、ZEB Readyを見据えながら高度な省エネルギーに取り組む建物として設けられています。
基準となるBEIは建物用途によって異なります。事務所、学校、工場などでは再生可能エネルギーを除いて40%以上削減、つまりBEI≦0.60。ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所などでは30%以上削減、つまりBEI≦0.70が基本となります。国土交通省でも、ZEB Oriented相当の省エネ性能として、事務所等・学校等・工場等はBEI≦0.6、それ以外の対象用途ではBEI≦0.7という水準を示しています。
| 主な用途 | ZEB Orientedの省エネ水準 |
|---|---|
| 事務所等 | BEI≦0.60 |
| 学校等 | BEI≦0.60 |
| 工場等 | BEI≦0.60 |
| ホテル等 | BEI≦0.70 |
| 病院等 | BEI≦0.70 |
| 百貨店等 | BEI≦0.70 |
| 飲食店等 | BEI≦0.70 |
| 集会所等 | BEI≦0.70 |
なお、ZEB Orientedの正式な評価では単純にBEIだけを満たせばよいわけではありません。延べ面積10,000㎡以上といった条件や、WEBPROでは十分に評価されない省エネルギー技術、いわゆる未評価技術の導入なども関係します。資源エネルギー庁の資料でも、ZEB Orientedについて10,000㎡以上であることや未評価技術の導入が要件として整理されています。
BEIは設備ごとの省エネ性能を積み上げて決まります
BEIを下げる方法について、「高効率空調を入れれば下がりますか?」「照明をLEDにすればZEB Readyになりますか?」という相談を受けることがあります。もちろん空調や照明の高効率化は重要ですが、実際のBEIは複数の設備用途の計算結果を積み上げて決まります。
非住宅建築物では、空調、換気、照明、給湯、昇降機などについて、それぞれ基準となるエネルギー消費量と設計仕様によるエネルギー消費量を計算します。そのため、どの設備がBEIを押し上げているのかは建物によって違います。
例えば事務所では空調と照明の割合が大きくなりやすい一方、ホテルや病院では給湯負荷も無視できません。飲食店では用途特有の設備条件が影響します。そのため、「ZEB Readyにするならこの設備を入れればいい」という共通の答えがあるわけではありません。
私たちがZEB案件で重要だと考えているのは、最初にBEIを計算し、設備用途ごとの結果を見て、どこを改善すると効率よくBEIが下がるのかを確認することです。
BEIが0.55なら、あと0.05だから簡単とは限りません
実務上、ここはかなり重要です。例えば省エネ計算を行った結果、BEIが0.55だったとします。ZEB Readyの目標が0.50なので、「あと0.05なら少し設備を変更すれば届くだろう」と思うかもしれません。
しかし実際には、その0.05を下げることが簡単とは限りません。すでに照明がLED、高効率空調を採用し、換気設備にもインバーター制御等を採用している場合、残された改善手段が少なくなっていることがあります。その状態からBEIをさらに下げるには、外皮性能の見直し、空調方式の変更、熱源機器の変更、照明制御の追加など、設計への影響が大きな変更が必要になることもあります。
反対に、BEIが0.60程度でも、設備仕様がまだ仮入力であり、空調効率や照明制御を適正に入力すると一気に0.50へ近づく案件もあります。
だからこそ、BEIの数字だけを見るのではなく、「どの設備の一次エネルギー消費量が大きいのか」「現在の入力条件に改善余地があるのか」を確認することが大切です。
ZEBを目指すなら省エネ計算は設計初期から行うのがおすすめです
ZEBを取得したい案件で私たちが特におすすめしたいのは、省エネ計算を確認申請直前まで後回しにしないことです。
通常の省エネ基準適合だけであれば、ある程度設計が固まってから計算しても対応できる案件はあります。しかしZEB ReadyのBEI0.50やZEB OrientedのBEI0.60・0.70など、明確な目標値が設定されている案件では、設計終盤になってから「BEIが足りない」と分かると大きな手戻りが発生します。
ZEBを目指すのであれば、基本設計段階で一度BEIを計算し、目標値に対して現在どの位置にいるのかを把握する。その結果を見ながら、外皮、空調、換気、照明、給湯などの仕様を調整する。そして実施設計段階でもう一度計算する。この進め方の方が、設計変更を最小限にしながらZEB基準へ近づけやすくなります。
特にZEB Readyを目指す案件では、「BEI0.50を満たすかどうか」を設計の最後に判定するのではなく、BEI0.50へ向けて設計を組み立てていくという考え方が重要です。
ZEB・BEIの計算で困ったらコタエルへご相談ください
ZEBを検討している案件では、単に省エネ計算を行うだけではなく、「現在の仕様でBEIはいくつになるのか」「ZEB ReadyのBEI0.50まであとどの程度なのか」「どの設備を変更すれば効率よくBEIを下げられるのか」といった検討が必要になります。特に事務所、学校、工場、ホテル、病院、店舗、共同住宅との複合建築物などでは、用途や設備構成によって計算条件が大きく変わります。
コタエルでは、省エネ計算やZEB関連業務について見積もりのご相談を受け付けています。「ZEB Readyを取得したい」「現状の設計でBEIを確認したい」「BEI0.50まで届かないので改善案も含めて相談したい」「省エネ適判とZEB計算をまとめて依頼したい」といった案件もご相談ください。
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